そして結局私は母に甘えて、息子たちと一緒に実家に出戻った。

「う~ん…久っしぶりによく寝た~」

伸びをしながら居間に入ると、ジロリと睨まれる。

「…まったく…いい年して、実家に居候なんて…恥ずかしくてご近所に顔向けできないよ…」

「お母さん…ほんとにごめん。でもね…どうしようもない事って…あるのよ…」

母はうなずきながら言った。

「もちろん…。母さんはアンタの事信じてるよ。昔っからなんでも自分でためこんで、弱味を人に見せないアンタが、初めて弱味を見せて頼ってきたんだもんね…。ただ事じゃないことくらい、わかるわよ…」

母の温かい言葉が胸に沁みた…。

「まぁ、とにかく。一人娘のアンタが戻ってきてくれたんだから、むしろ喜ばないとね!お父さんも、なんだかんだ言って、恭平と聡介がかわいいんだから。気の済むまで居ればいいわよ」

「…うん…。ありがとう…お母さん…」

親の存在は今の私には本当に有り難かった。

恭平と聡介も少し落ち着いてきていた。
初めは毎日のように私に質問を繰り返していたが、私が一切本音を語らない事で諦めがついたのか最近では何も聞いてこなくなった。

どんなに二人に恨まれようが真実は言えなかった…。

水谷にも打ち明けていない、私の本当の気持ち。
いや、二人に言えないのは私が水谷に打ち明けていないからではない…。

本当は水谷自身に気づいてほしかったのだ。

私が言わなくても…
本当の理由に気づいてほしかった…。

でも彼は最後まで気づかなかった。

私の本当の気持ちを知っているのは、親友の沙由美、彼女ただ一人だけ。
沙由美が恭平と聡介に言うわけがない。
私はきっとこれから先、沙由美以外の誰にも真実を明かすことはないだろう。