水谷がここまで変わるのは何かきっかけがあったはず。

問題はその"きっかけ"だ。

ちょっとやそっとの事で自分の考えが変わる人ではない。
何か相当、自分の常識を打ち破るような事があったのではないか。

まさか…

私はそこで初めて、今まで一度も抱いた事すらない疑惑が脳裏をよぎった…。

そういえば…いつだったか、過去に水谷の言動に違和感を覚えた時があった。
あれはいつだったんだろう…。

自分でもまわりが見えていなかったから、水谷の変化にも全く気付かなかった。
だがそんな中で、あれ?と思った事があったのに…。

どうしても思い出せない…。

黙り込む私に、しびれを切らした聡介がたたみかけるように言った。

「母さん!今さら隠し事なんてしないで全部話せよ。…今しか…ないかもしんねぇんだぞ…。今…言わなかったら、絶対に後悔する…」

もし聡介の言う通り、自分の気持ちを洗いざらい話したら…
それで水谷をつなぎとめられるのだろうか?

そんな風に思い始めると、出ていく、離婚すると強く決心していたはずの私の心は情けないほど揺れていた。

だが心に引っ掛かる"何か"が、私に素直に話させる事を阻んだ。

その"何か"を私が知る事になるのは…もっとずっと後の事になる…。