慌てて聡介に近づこうとすると、彼は低く怒ったような声で私に言った。

「…どういう事だよ…。離婚するって…」

私が答えるのをためらっていると、水谷が言った。

「…聡…。ごめんな…。全部父さんが悪いんだ…。父さんがバカだったから、母さんを絶望させてしまったんだ…」

水谷の言葉を聞き、聡介は信じられないような言葉を放った。

「今さら何言ってんだよ…。母さんが絶望なんて…今に始まった事じゃねぇよ。今まで二人とも何食わぬ顔して生活してたくせに…何が今さら離婚だよ!
ふざけんじゃねぇよっ!!」

そう叫ぶように言って、聡介はリビングを出て行ってしまった…。

聡介に…
気持ちを見抜かれて…いた…。

何も言わないから…
まだ子供だから…

そう…思っていたのに。

聡介の事を何もわかっていなかったのは…
私の方だった。

それは水谷も同じように感じているに違いない。

「聡のやつ…、何もかもお見通しだったんだな…。俺は…みんなを傷つけてきたんだ…」

うなだれる水谷を支えたい衝動に駆られる…。
でもここで弱気になっては、あんなに苦しんで導いた答えが無駄になってしまう。

もうこれ以上苦しみに耐える自信がなかった私は、心を鬼にして水谷に言った。