怒っているオジサンはその人に言われた事が気に入らなかったらしく、彼に向かって凄む。

「んだと！お前、どこのどいつだ！？俺を誰だかわかって文句言ってんだろうな！？」

首根っこをつかみ、顔を至近距離まで近づけながら怒鳴っている。

私は恐ろしくなって、目をそむけようとした。

しかし、その男性は顔色ひとつ変える事なく…
笑顔をはりつけたままで言った。

「おたく、そんなに有名なんですか？大変申し訳ありませんが、僕はあなたを存じ上げませんね。あ、ちなみに僕ですけど、Ｄ自動車の水谷っていいます。よろしく」

涼しい顔でサラリと嫌味を言いながら、右手まで差し出す。
当然、オジサンの怒りはさらにヒートアップし…まるでゆでタコのように、みるみるうちに顔が真っ赤になった。

私はどうしていいのかわからず、ただハラハラしながら行方を見守っていた。