「…そうよ…。汚らわしいじゃない…。いくら成績の為だからって、相手の言いなりになって関係を持つなんて…私には考えられない…。そこまでしてのしあがっても意味ないから。よくも今まで私たちの事、だましてくれたわね…」

水谷は絶句した。
私はさらに追い打ちをかける。

「…離婚して下さい…。私もう、あなたの事、信じられない…。子供たちにとっても、こんな父親と一緒にいるのは…よくないわ…」

やっと…
言えた…。

ずっと心の奥に封じ込めていた言葉を、ようやく言えた。

私の言葉に動揺している水谷。
普段のポーカーフェイスがどこに行ったのかと思うほど、今の彼の顔は悲しみに打ちひしがれているように見えた。

「待ってくれ…。確かに俺は普通じゃあり得ない事をしたけど…。でも、お前と結婚してからは、一度もそういう事はしてない!それは…信じて欲しい…」

こんなに必死になっている水谷を私は知らない。
その姿に心がぐらつく。

だが今、仏心を出すわけにはいかない。
ここまで来て中途半端な優しさを出してみても、お互いに辛いだけ…。

もう私たちの苦しかった日々は終わりにしなければいけないのだ。