冷めきった夫婦生活を見て見ぬ振りで過ごして来た私たち。
水谷も納得しているものだと思っていた。

なのに…今になって水谷の過去の汚点のような話をする意味がわからない。

最後まで聞き終えて水谷の真意を量っていると、信じられない言葉が彼の口から飛び出した。

「それで…こんな情けない俺でも…お前は受け止めてくれるか…?」

私の頭の中ではたくさんのクエスチョンマークが飛び交っていた。

は?この人、一体何を言ってるの…?
受け止めるも何も…今までずっと、それこそ結婚してからずっと、私はあなたの心に寄り添いたかったのよ?
それを拒否してきたのは、あなた自身じゃない。
何をいまさらわけわかんない事言ってんのよ!

心の中に出てきた思いをぶちまけてやりたかった。
でも今の私には何も言う事ができない。

いや…もしかしたら…

考えようによっては…
これはチャンスかもしれない…。

もしかしたらと一縷の望みをかけたこの結婚はやはり間違っているとわかった。
だけどそんな偽りの生活も、水谷も、失うのは怖かった。
だから無理をしてでも続けてきたが…

もういい加減疲れた。

今なら、私の返事次第でこの生活に終止符を打てるのではないか…。
そう考えて私は水谷に対する出方を決めた。

私の答えを待つ彼に向かい、はっきりと言う。

「汚らわしい…」

そう言った私を水谷が驚いて見た。

「…今、…汚らわしい…って言った…の、か…?」