確かに離婚するのは色々と面倒くさそうで。
顔を合わせる事も会話をする事もほとんどなくなっていたけれど、離婚するという選択は私にはなかった。

ただ現実的な辛さから逃げてはいた。
それが根本の問題の解決には全くなっていない事に、どこかで気づいていながら気づかないふりをしていたのだ…。

その逃げ場として選んだのが、仕事だ。
窮屈なあの家から出れば気分も変わる。
職場の人間関係もいいし、仕事そのものにやりがいもあった。

さらには女としての欲望を満たしてくれる相手もいる。
そうやって私は、ぬるま湯に浸かり現実から目を背ける生活をその後何年も続けたのだった。


**********

今夜も残業と偽って小西と会っていた。
お互いに馴染んだ体は何も言わなくても勝手に快楽へとのぼりつめる。

私は家庭の不満をすべて小西との情事にぶつけていた。
水谷とうまくいかなければいかないほど、小西との快楽に溺れる。
抱かれている間中、水谷の顔がちらついてはいるけれど。
むしろ、裏切りという背徳心がより一層快感へと導いてくれていた。

小西との時間を十二分に堪能した私はいつものようにシャワーは浴びずに帰宅する。

社宅の駐車場に着くと既に水谷の車がある事に驚いた。
今夜に限って水谷が先に帰宅していたとは。
いつも月末の一週間は午前様だというのに。

私は何だか胸騒ぎがした。