驚いた私は涙でグシャグシャの顔を小西に向けた。

「僕は独身だけど、今は特にお付き合いしてる女性はいないんだ。
適当に遊んではいるけどね。でもそれって結構大変でさ。できれば決まった人とドライな関係を持ちたいんだよね…。ってさすがに君にはできないか…」

ドライな関係…。

考えてみれば、水谷との関係もずっとドライな関係だった。
私がいくら彼の事を思っても、彼が私をみてくれる事は一度もなかったのだから。
今さら小西とドライな関係を持ったところで、何が違うというのだろう。

世間的な倫理の問題と、子供に対しての罪悪感の問題、それだけだ。

小西の申し出が常識を逸脱している事はよくわかっている。
なのになぜだろう。
目の前にいるこの人に無性に縋りたくなっている自分がいた。

だが、私の小西に対する警戒心はまだ完全に解かれてはいない。
一時の感情に押し流されて万が一足元を掬われてしまっては、との一抹の不安もよぎる。

「それはつまり…不倫ですよね…?あなたは独身だから問題ないかもしれないけど…。私にとっては、バレたら身の破滅になりかねません…」

私は思っている事を小西に告げた。