「なっ、何ですか…!」

私が手をふりほどこうと力を入れると、小西はさらに強い力をこめてきた。
そして無理やり私の体を自分の方に引き寄せる。

体がこわばる…。
必死に抵抗を試みるも、しょせん女の細腕の事だ。
男の力にかなうはずがない。
私が抵抗するのをやめると、なぜか小西も力を緩めた…。

不思議な顔で小西を見る。

するといきなり小西が笑い出した。
そうかと思ったら今度は謝ってきた。

「ごめん…。手荒な事して…申し訳ない…」

黙る私に小西は続けた。

「でもね…。ここまでしないと多分…君は自分のほんとの気持ちに気づかないよ。どうだった?ダンナに助けて欲しいって思った?」

小西のその言葉に、私の涙腺はいとも簡単に崩壊した。

まさに彼の言う通りだ。
私は一度も水谷の事を思い出さなかった。

助けて欲しいとも…
思わなかった…。

あの時私が選んだ道は、こんなにも自分を苦しめる道だったのだ。

泣き続ける私に向かい小西は言った。

「あのさ…。もし、よかったら…なんだけど。お互い淋しい者同士、慰め合うってのは、どう?」