「あれ…？もしかして、的外れな事言っちゃった？…ふーん…。なるほどね…。水谷さん…もしかしてダンナとうまくいってない？」

私の顔を下から覗き込むようにニヤニヤと笑う小西。
いやらしいその顔を見ないようにして、反論する。

「ち、違います…！円満、です…」

スパッと言い切ろうと思っていたのに、どもってしまった。
すると小西はさらにいやらしげな顔で言った。

「そう？でも最近夜の生活はなさそうだね？お肌が全然潤ってないもんねぇ…」

なんて失礼な事を言う奴なんだと軽蔑する。

「失礼します！」

私は大声でそう言ってドアを開け、後ろ手で思いっきりバタンと閉めた。

ムカムカした気持ちをなんとか抑えながら、事務室に戻る。
待っていた沙由美が資料を持っていない私を見て、どうしたの？と聞いてきたが私は腹立ちのあまり返事もせずに席についた。

「ちょっと！智子ってば！」

大きな声を出した沙由美にようやく気付く。

「あ…ごめん…なんだっけ？」

「ちょっともう～、大丈夫？智子、随分長かったね。で、資料はどこ？」

沙由美に聞かれて焦った私は思わず嘘をついてしまう。