「あれ…?君は…」

私は、「すみません!失礼しました」と言ってその場を去ろうとしたが、小西に呼び止められてしまった。

「君は確か…クラークの水谷さん…だったよね?」

小西が私の名前を知ってる事は正直驚きだった。

「はい…」

「君も資料が必要なの?ごめんね、邪魔しちゃったみたいだね」

私は小西の言葉に、大丈夫です、と答えた。

「でも、いるんでしょ?いいよ、探しなよ。鍵は僕が返しとくから。
まだ僕もしばらくここにいるんでね」

私は小西の申し出を即座に断ろうと思い、「いえ、大丈夫です。私は先に失礼しますから」と言って部屋を出ようとした。

すると、小西がまるで独り言を言うように呟いた。

「…なんでかな…。君だけだよ。僕に興味をまったく示さないのは」

何を言い出すのかと拍子抜けしてしまう。
そんな私に気づいているのかいないのか…さらに小西は続ける。

「そっか。やっぱりダンナとうまくいってる女性は違うんだね。愛されてるから他の男は目に入りませんってヤツ?」

私は一番つついてほしくない事を小西に指摘されて、思わず顔をしかめた。

そして小西はそんな私の変化を見逃さなかった。