たかが若い医者一人が来たくらいの事で病院全体が浮き足立つなんて、田舎の病院だからこそだと思う。
都会なら絶対にそんな事くらいでそうはならないだろう。

別に田舎を蔑視しているわけではない。

でも小西を見ていると田舎の病院だとバカにされているような気がして、どうにも気分が悪かった。

そんなに印象の悪い小西が自分の人生に深く関わってくるだなんて、この時誰が想像しえただろうか…。

私自身が院内で一番、彼に対して無関心を貫いていたはずなのに。



あれは…
たまたま私が残業で遅くなり、小西が当直をしていた日だった。

足りない資料を探すため私は資料室に行った。
まず鍵を預かる守衛室に行き貸出簿に記入しなければならないのだが。
私が行った時には既に鍵は貸し出されており、まだ戻ってきていなかった。
私は守衛にまた後から来ると言い、事務室に戻るため来た道を引き返していた。

事務室に戻る途中、喉が渇いたと思って自動販売機のあるフロアへ向かう。
ペットボトルのお茶を購入し戻ろうと思ったところで、ふと資料室の事が気になった。