それから結婚までトントン拍子に進む。

沙由美に打ち明けた時はビックリされてしまった。
そもそもいつの間にそういう事になっていたのかと責められもした。
私は迷っていたという事実を伏せて、過去にあんな事があったから言い出しにくかったんだと言って誤魔化した。

きっかけこそ見合いだったけれど、その後はごく普通の付き合いをして結婚へ至ったのだと沙由美は信じているようだった。

そしてその後、とうとう私は水谷と夫婦になった。

周囲が相当浮かれているのとは対照的に、私は当事者であるにもかかわらずどこか冷めていた。
その理由はもちろん、水谷の気持ちが私にはない事。
結婚するというのにいまだ片思いのままの私が、ウキウキとした気分になれるはずもない。
結婚式の時も披露宴の時も、私はとにかく作り笑顔を振り撒いていた。

みんなの心からの祝福や両親の喜ぶ顔を見るたび、私の胸はチクリと痛んだ。
騙しているような気分になって苦しくなった。

だけどそれは覚悟の上で私自身が決めたのだから、どんなに苦しくても進んで行くしかない。