でもそれがわかっていながら…
私は水谷から離れる事ができないでいる…。

なぜ、私は彼から離れる事ができないのか。

全てを捧げたから？
しかもそれが初めてだったから？

いや…きっと両方とも、違う。

そんな理由ではない。

体を捧げようが捧げまいが、私は水谷の事を心から愛してしまった。

本当に初めて会ったその日から、私の心はずっと水谷に支配されているのだ。
あんなに冷たくてエゴイスティックな男を、まさか自分が好きになるなんて思ってもみなかったけど…。

私の人生に水谷がいない事など考えられないし、考えたくもなかった。

水谷以上に、本当は私の方がエゴイストなのかもしれない。

彼を諦め、今後誰か他の男性(ひと)と縁を結んで別の人生を選択する。
何百通り、何千通りもある人生の中で豊富に存在する選択肢。

けれどその可能性を全てかなぐり捨てて私は水谷との人生を選ぼうとしている。

それがどんな結果をもたらすのか、頭のどこかではっきりと理解しているのにも関わらず。

そして私はうっすらと顔を覗かせている暗黒の未来に、自ら蓋をしたのだった。