私が未経験だという事を、きっと水谷は気付いただろう…。

途中で躊躇うような()があった。

ぐったりと項垂れる私の髪を優しく撫で、彼は浴室に消えた。

一人残されたベッドの上で冷静な思考を取り戻す。

最初から最後まで、彼は決して自分本位で私の体を自由にはしなかった。
優しく丁寧に扱ってくれていたと思う。

でも…
でもどこか、何かが違う…。

今まで一度も経験のない私が、そんな事わかる筈はないと思っていた。
でもやっぱり、そういう事は本能的に悟るのかもしれない。

この行為は…愛情があるのとないのとではやはり違う、という事に…。
どのように表現すればいいのだろう…?
体の芯から込み上げてくるような熱さ、愛しさみたいなものが、水谷からは感じられなかった。

そういうのって、経験がなくてもわかるんじゃないだろうか。

少なくとも今の私が感じているこの虚しさが、その証拠ではないのか。