「あなた…結婚前の女というのは、どうしても慎重になるものなんですよ…。
本当に自分の一生をこの人に賭けてもいいのかって。そこから先、何があるかなんてわかりませんもの…。誰だって簡単には決められないと思いますわ。
でもね、智子さん…。わたくしも今までたくさんの方のご結婚のお世話をさせて頂いたんだけど…。主人の言うように、ここまで条件の揃った方はいなかったわ。是非、前向きに考えて頂きたいと思うのよ」

部長と奥様の言う事はもっともだ。
傍から見れば、水谷は知勇兼備な男性。
それに引き替え、私は至って平凡この上ない女。

私のような女の取り柄といえば、若さだけだ。
その若さがあるうちに決めてしまえという事もあるに違いない。