朝イチで部長に承諾の返事をすると、その日の昼にまた部長室に呼ばれた。

ササっと昼食を済ませて部屋へ向かう。

ノックをしてからドアを開けると、部長と一緒に奥様が、今日もしっかりメイクの顔をほころばせながら座っていた。

「奥様!いらしてたんですか。先日はお世話になりました」

そう言ってお辞儀すると、すぐに私に近づき手を握ってきた。

「智子さん、おめでとう!きっと幸せになれてよ!あなた本当にラッキーだわ。水谷さんのような方、なかなかいらっしゃらなくてよ。生まれてくる赤ちゃんが今から楽しみだわ!」

奥様の気の早過ぎる言葉に赤面してしまう。

部長も、

「おいおい、いくらなんでも気が早すぎるんじゃないか」

とけん制する。

部長の言葉に奥様が反論した。

「あら、あなた!こういう事は早い方がいいんですのよ!智子さんも今は若いけど、すぐに年をとるんです。いくら晩婚ブームといってもね、子供は早く産むに越したことはありませんでしょ!智子さん、あなたも主人に言ってやってちょうだい」

私は苦笑いしながらソファに座った。

「いえ、奥様のお心遣い、有難く思っております…」

私の言葉に奥様は得意げな表情になる。

その奥様とは対照的に、やれやれというような表情をした部長が私の向かい側に座って話を始めた。