「ひどい男…」

ポツリと言った瞬間、涙が落ちた。

絶対に断ってやる…。
誰があなたの思い通りになんかなるものか…。

唇を噛みしめながら、明日部長に断りを入れようと決心する。
こんな私だって、最低限のプライドくらいは持ち合わせているのだ。
あまりにも人をバカにしたような水谷の態度は許せない。

あの人はきっと今まで異性からこんな仕打ちを受けた事などないのだろう。

確かにあれほどの容姿だ。
その上仕事もできるとなれば、まわりにいる女性はきっと彼を放ってはおかない。

以前私の職場で起こった出来事にしたってそうだ。

まわりが他人事だと思って関わらないようにしているのを、敢えて自分から騒ぎを大きくするような事をした。
自分が決して負けない事を踏まえた上であるのは間違いない。
結果、私のように彼の虜になってしまう女がいる。

今まで過去にそんな女が数えきれないくらいいたとしたら。

それなのに、いくら上司が勧めた事とはいえ見合いを受けるなんて、私には到底理解できる事ではない。