「そうですね。せっかくですから、外へ出ましょうか?」

驚いて水谷を見るも、相変わらず飄々としたまま笑顔まで見せている。
私は渋々納得して、水谷と一緒にホテルの庭へ出た。
並んで庭を歩いていくと小さな東屋のようなものがあり、私達はそこの椅子に座った。

そして水谷は普通に会話を再開させた。

「大丈夫ですか?少しお疲れなのではありませんか?」

一点の曇りもないような笑顔…。
その笑顔を向けている相手は、以前にあなたに助けられた女ですよ…?

どう答えていいかわからずに黙っていると、

「すぐ切り上げた方がいいなら、戻りましょうか?」

と聞いてくる。

私は小さい声で、「いえ…、大丈夫ですから…」とだけ答えた。

そう言ったあとは気まずい沈黙が流れ始める。
いっそのこと水谷に尋ねてみようか?

"私の事お忘れですか?"と。

しかし、すぐにそれはただ虚しいだけだと気づき思いとどまった。

すると突然、水谷が私に向かって言った。

「僕はこのお話、是非進めたいと思います」

驚きのあまり、うつむいていた顔を上げてしまう。
まさかの水谷のこの発言に私は耳を疑った…。
聞き間違いかと思った。
目を見開いて見つめる私に、水谷はさらに続けた。