見合い当日。

自家用車で目的のホテルへと向かう。

車中で今日の日までの何日かの事を思い出しながら、久しぶりの再会に胸を躍らせている私がいる。

そんな私を更に奈落の底へ突き落すような事が待っているとは露ほども疑わずに。

ホテルに到着しロビーへ向かうと、既に部長は来ていてその隣にはお世話好きと噂の奥様が立っていた。

私は二人の方に近づき頭を下げて挨拶した。

「部長、本日はよろしくお願い致します。奥様初めまして…。いつも部長にはお世話になっております」

するとすぐに奥様が上機嫌で話しかけてきた。

「まぁ~主人から聞いてはいましたけど、本当に素敵なお嬢様ですこと!
こんなにかわいい方なら、決まったも同然ね!あなたもそうお思いになるでしょ?」

奥様の褒めっぷりに思わず、

「いえいえ…」

と謙遜した。

お世話好きの奥様からすれば精一杯の褒め言葉のつもりだろう。
でも自分の容姿の事は誰でもない自分が一番よくわかっている。

少しくらい小ぎれいにしたからといって、元々の造形までは変えられない。

それでも、あの水谷の相手として相応しくあるよう、頑張ってはみた。

彼にもほんの少しだけでいいから、好感を持って欲しい。

最初から完全に負け試合になるなんて嫌だったし、病院で会った時の私より今の方が少しでも素敵だと思ってくれれば…

そんな身の程知らずの夢を抱いて、その時を待った。