部長から詳しい日取りと場所の連絡があり、水谷と会う事になったのはそれから一週間後だった。

M市で一番格式の高いホテルの一室で、私たちのお見合いは執り行われた。
お見合いといっても堅苦しいものではないとの話で、正装はせず洋服で来てほしいと言われた。

それはそれで気楽なのだが…

それでも私は久しぶりに会う水谷に少しでもいい印象を持ってもらいたくて、洋服選びにも四苦八苦した。
やっと服が決まっても、それに合わせるアクセサリーがなかなか決められない。
もともと派手なものは持っていないけれど、地味すぎてもダメではないか…。

そんな事を考えて、何回も何回もまるで着せ替え人形のように試している自分がいた。

洋服にアクセサリー、次はヘアスタイル…美容院に行くべきかどうか、かなり迷う。
セットだけにしてもらうかはたまたヘアスタイルそのものを変えようか。

鏡を見ながらああでもない、こうでもないと独り言を言いながら必死になっていた時、ふと気づく。

よく考えてみれば水谷とは初対面ではない。

随分前にはなってしまったが、病院で初めて会った時…。
その後電話で話もしているではないか。

私はその事をすっかり忘れ舞い上がっていた自分を笑った。
そこまで躍起になる必要などなかったのだ。
そう思うと少し楽になった。