写真を見つめたまま無言でい続ける私の姿に、何を勘違いしたのか部長が高らかに笑う。

「ほぉっほぉっ…! なかなかの二枚目だろう?絶対にモテると思うんだがな…。特定の相手がいないなんて信じられないな」

そう言いながら部長はまた高笑いをした。

私が絶句したのは、写真に写っている人が二枚目だからではない…。
いや、確かに二枚目には違いない。

違いないけど…その人はただの二枚目ではなかった。

そこに写っていたのは、まぎれもなく私が恋していた水谷賢その人だったのだ…。

心臓が信じられないくらいドキドキしている。
まさかこんな形で彼と再会しようとは思わなかった。

さっきまで断る気満々だったはずの私は、迷路に迷い込んだかのように戸惑いを隠す事ができない。

そんな私の心を見透かすかのように、部長は言った。

「会うだけなら…いいんじゃないかね?会ったら必ず結婚しなければいけないなんて、時代錯誤な事を言う気は毛頭ないよ。嫌だったら、君の方から断ったっていいんだ」