私が黙っていると部長が私の不安を察知したのか、

「ああ、でも、絶対に結婚しなきゃいけないってわけじゃないからね。
あくまでも、相手側の希望を汲んだ時に、松島くんならと私が思っただけなんだ。だから、プレッシャーには思わんでくれんか」

と優しく言った。

部長は見た目は少しイカツイが、器が大きくて頼りになる人。
私も上司としてとても尊敬している。
そんな人にそう言ってもらって、正直悪い気はしない。
ただ見合いとなると、二つ返事でOKというわけにはいかなかった。

「少し…考えさせていただけませんか?」

とりあえず無難な言い方をしてみる。
いくら恋愛経験が乏しいとはいえ、見合いをしてまで結婚しなければいけないというほど焦っているわけではない。

確かに恋愛そのものには少なからず憧れはあるけれど。

この前の水谷の一件で、元々恋愛に臆病な私はさらに奥手になってしまっていた。
そんな私だからこそ、見合いというのは絶好の出会いのチャンスであるには違いない。
かといって、いかにも飛びつくような事もしたくはなかった。