「いえ…何か、ありましたでしょうか…？」

部長から何を言われるのかあれこれと想像してはみたものの、どうにも思い当たる節がない。
しかし部長から出た言葉は、私の心配とは全く無縁の内容だった。

相変わらずの笑顔で部長は少し私の方に身を乗り出しながら言った。

「いや、他でもないんだけどね。松島くんは今、交際中の男性はいるのかね？」

いきなりのプライベートな質問に面食らい、思わず眉間にしわが寄ってしまった。

すると部長が私の表情をくみ取って言った。

「ああ、ごめんごめん、いきなり申し訳なかった。普段は仕事でも直接こんな風に話さないからね。急に何を言うのかと君が驚くのも無理はないな、ほんとにすまない。いや、単刀直入に言うとね。実は私の家内が、人様のお世話をするのが大好きでね。お世話っていうのは、その…男女の仲をとりもつってやつなんだけど…。まあ、そういう事を趣味にしてるようなヤツで、参るよ。
それで、松島くんに、是非会わせたい男性がいるんだけどね」

男女の仲を取り持つ？

それはつまり…
見合いの話、という事か？

そう思った私は思わず黙り込んだ。