あまりにも突き放すようなその言い方に、私はスマホを握りしめたまま動けなくなる。
握りしめた左手が震えるのを、右手で必死に覆い隠した。

電話の向こうで水谷がいかにも面倒くさそうな表情をしているのかと考えるだけで、胸が苦しくなり、声を出すのさえ苦しい。
黙りこくる私の様子に異変を感じたのか、沙由美が心配そうに私の顔を覗き込んできた。

その沙由美の顔を見て、ハッとする。
声を出すと泣きそうになったが、やっとの事で私は言葉を発した。

「…水谷さんのお気持ちは、よくわかりました…。かえって、私の気持ちを押し付けるような事をして、申し訳ありませんでした…」

最後の方は涙があふれてしまい、聞き取れないような小さな声になってしまった。

こんな風に突き放すような言い方をされるなんて、夢にも思っていなかった。
私の知らない水谷の一面が、自分勝手に美化して作り上げていた彼の姿を簡単に壊してゆく。
私は絶望にも似た思いで電話を切ろうと言葉を発した。

「…それでは…」

すると水谷はさきほどとは打って変わり、優しい口調で私に言った。