「あ、あの…私…」

おどおどして話そうとした私をまたもや水谷が遮る。

「別にお礼をしてもらいたいから、あなたを助けたわけじゃないんです。
いや、そもそも助けたつもりもないんですよ」

「…え?それは…」

私は水谷の言っている意味がよくわからなかった。

「ですから…、僕は理不尽な言いがかりをつけるヤツが大嫌いなんです。
しかも、言い返せない立場の人に向かってやるヤツがね。卑怯でしょ、そういうの」

「そ、そうですね…」

勢いのある水谷の言い方に、相槌程度の事しか答えられない。

「ああいうヤツを見ると、虫唾が走るんでね。あくまでも、僕が気に入らなかったってだけです。結果的にあなたを助けた形になりましたけど、結局は自己満足でやったって事なんで。そういうわけですから、あなたも恩義を感じる必要なんてないんですよ」

私はなにか自分が水谷に迷惑をかけてるような気持ちになってきた。
それくらい、水谷の言い方は冷たく感じられたのだ。

だんだんと水谷と話すのが辛くなってきたが、ここでくじけると今までとなんら変わらないと思った私は、意を決して言った。