それを聞いた途端焦ってしまった私は、沙由美のスマホを取り上げようと動くが簡単に阻止されてしまう。

かくなるうえは…どうか水谷が留守でありますように…と祈るしかない。

ところが私の祈りも虚しく…

聞こえてきた沙由美の話の内容で、水谷がいるとわかってしまった。
沙由美はさっきよりもさらに甘えたような声で話す。

「水谷さんですか~? すみません、突然…。今お電話よろしいです~?あのぉ、実は~、…この前助けて頂いた私の友達が、是非、お礼をしたいって言ってるんですけど~」

なんでそんな若い女の子みたいなしゃべり方してるわけ?

と、私は心の中で毒づいた。

沙由美は電話に出た水谷を相手に、そのしゃべり方で続ける。

「いえいえ、そんな無理なんかしてませんよぉ~。それで~一緒にお食事でもどうですかって言ってるんですけど~。…え?今、ですか? いや…その…ひ、一人ですよ、私」

なぜか急に歯切れが悪くなり、しゃべり方もいつの間にか普通に戻っている。
不審に思った私は、彼女の顔をのぞきこんだ。

「ほんとですって!私が勝手に電話してるんですよ!彼女はそういう事慣れてないから…。いや、だから……、はい…。ちょっと、お待ち下さい…」

私は沙由美が水谷に何を言われているのかと気が気ではなかった。