「ちょっと、智子！毎日毎日ため息つかれたんじゃ、あたしもテンション下がんだけど？」

昼休み。
交代でとった休憩で一緒になった親友の沙由美にチクリと嫌味を言われた。


石田沙由美(いしださゆみ)。

受付でレセプト業務を担当する部署にいる。
先日の水谷の一件で、私に水谷の様子を見に行かせてくれた事務員が彼女だ。

あの時のすごかった水谷の話を沙由美に報告して以来、顔を合わせると色んな話をするようになった。
引っ込み思案で院内に仲のいい人がいなかった私は、気さくに声をかけてくれる彼女に好感を持った。

そして今では仕事帰りにご飯を食べに行ったり飲みに行ったりする程仲良くしている。

「ごめん…。自分でもわかってるんだけどさ…。考えるとついついため息が出ちゃって…」

言いながらまたため息をついてしまう。

「あ～、もう、わかったわかった！今日はとことん聞いてやるから！飲み行こ？だから、仕事ちゃっちゃと終わらせなさいよ！」

沙由美は笑いながらそう言って自分の部署に戻って行った。


勤務時間終了後、沙由美と行くのはいつもの居酒屋だ。
ビールで乾杯し、頼んだ料理を食べながら一日の仕事の疲れを労い合う。

そこまではいつもと同じなのだが…。

今日の沙由美はちょっといつもとは違っていた。