あまりにもあっさりとした幕切れを、少し淋しく感じてしまう。

私らしくないほど積極的に水谷に向かってみたものの、あの穏やかな笑顔の中にある瞳の冷たさが気になった。

その冷たさも含め、秘められた本当の彼をもっと知りたいという思いが募る。

そしてその気持ちが恋と言う、自分にはしばらくご無沙汰していた感情だった事に気づき、私はもらった名刺に目を落とした。

名刺を見つめながらさっきの一幕を思い出す。

本当に…カッコよかったな…
水谷の無駄のない身のこなしや長い手足、汗ひとつかいていない爽やかなあの顔…。
その全てが私の心をわしづかみにしていた。

でも、初めてのトキメキに心が浮き立つ反面、自分のコンプレックスも否応なしに浮かび上がる。
どう考えても水谷と自分は釣り合いそうにない。
見た目はもちろん、あの自信に満ち溢れたような佇まいも。

私とは対極に立っている人のように思える。

彼のオーラは、ただイケメンでスタイルがいいという事だけで醸し出されているものではなさそうだ。
そんな人に平々凡々な自分がこんな気持ちを抱く事自体、間違っているのかもしれない。

でも、身の程知らずの思いはどんどん自分勝手に膨らんで行く。

そしてこの思いの先に何が待ち受けているのか、その時の私には考える事すらできなかった。