ハァハァと息を切らしながら目の前まで迫る。

水谷は不思議そうな表情で私を見ていた。

そして淡々とした口調で、「何か?」と言った。

「…あ、あの…、私…、さきほど、助、助けて…頂いた…」

息が切れてうまくしゃべれない…。
水谷は何の話かわからない様子で立ち尽くしている。

焦った私は、何度も深呼吸を繰り返して荒い息を整えた。

そして再び口を開く。

「さきほどは、助けて頂いてありがとうございました…」

相変わらず水谷はキョトンとしたままだ。

私は不審に思われないように必死に説明する。

「さっき、受付の所で患者さんに文句を言われて…。困っている私を助けて下さって…」

そこまで言うとやっとの事で水谷は、「あぁ…あの受付の…」と気がついてくれた。

そして優しく微笑みながら言った。

「別に気にしないで下さい。僕が勝手にした事ですから。個人的に、ああいうヤツが嫌いなんです」