うなだれる水谷を横目でチラリと見る。

そして私はクスッと笑った。
驚いて私を見る水谷に、私は笑顔で言った。

「違います…。私があなたを完全に忘れる事ができるまで…。吹っ切れるまでは関わりたくないだけです…。そうしないと、いつまでも新しい恋ができないでしょ…?」

私の言葉を聞いた水谷の頬に一筋の涙が流れて落ちた。

「智子さん…。本当にすまなかった…。そして…ありがとう…。
あなたの幸せを…心から祈っています…」

そして私も…

やっと…水谷が私の事をきちんと見つめ、考えてくれたような…
気がした。

「私も…お礼を言います…。こんなにも長い間、思いを寄せる事ができる人に出会えた事…。私の平凡な人生が、あなたと出会えて変わった事…。
辛い事もいっぱいあったけど、…でも、あなたの子供をこの世に誕生させる事ができました…。それだけは…私が誇れる事です…。どうか、その方といつまでもお幸せに…」

涙が止まらない…。
これ以上ここにいては決心が鈍るかもしれない。

私は静かに水谷に会釈をした。
そして車から降りる前に水谷に一言、言った。