「…彼女の…ため、です…。俺はあなたとの結婚生活が破たんしてしまっていると思っていました。でも、彼女の家庭はそんな事にはなっていなかった。
それに彼女は…仕事を変わったばかりで大変だったから…もしかしたら一時の気の迷いという事もあると、思っていたんです」

「気の迷い…ですか？」

「はい…。彼女は初めて営業という仕事に就いて、誰にも頼る事ができず、俺に頼ってきたんです…。それで信頼関係ができたので、愛情と取り違えている可能性があると思ったんです…」

「そう、ですか…。でも、信頼関係だけでは、なかったんですね…？」

「俺も最初は、頼ってくれる彼女に、少しでも俺の培ってきたものが役に立てばいいと、それだけの気持ちでした。でも、彼女は今までに出会った事がないタイプの女で…翻弄されているうちに…いつの間にか気づいたら好きになっていました…。ただ自分では、好きという感情がよくわからなかったので…、気づくのには時間がかかりましたが…」

「それでも一度は彼女をあきらめて…私とやり直そうと思ってくれたんですね…」