もしかしてその人は…女性?

…思い出した…。

何かずっと心の奥に引っ掛かって取れなかった…

何か…。

そう…違和感…
確か、違和感を覚えた事があったはずだ。

あれは…いつの事だったか…。

…!

そうだ…あれは…

水谷が私に生命保険の証券の保管場所を聞いてきた…。
あの時、私は初めて彼が感情をあらわにした所を見たんだった。

そしてその姿に違和感を覚えて…

「…もしかして…その、ある人というのは…あなたのクライアントで…生保レディに転職したとかいう…あの方、ですか…?」

私がそう言った途端、水谷の顔色が変わった。

「…やっぱり…そうなんです、ね…。その方ですか?今、あなたと一緒にいる方は…」

「え?なぜ…その事を…?」

「恭平がカノジョと電話で話しているのを、偶然に聞いちゃったんです…。
詳しい事は知りません。ただ…あなたがすごく変わったと…。
"親父をあそこまで変えるなんて、あの人はすごい”って言っていたのを。
もちろん、私たちはもう離婚してるから、あなたにそういう方がいるのをとやかく言う気なんて毛頭ありません…。私が言える立場じゃない…」

水谷は再び私から視線を外し、目を閉じてハンドルにおでこをつけた。