オジサンはさっきまでの勢いはどこに行ってしまったのかと思うほど、ちっちゃくなって逃げて行った。

水谷は着ているスーツをパンパンと軽く叩いてついていた汚れをサッと払った。

野次馬たちの誰かが拍手をすると、初めはパラパラとしていた音が次第に大きくなり、しまいには大拍手になっていた。

水谷は少し照れたのか頭をかきながら、「どうもお騒がせして申し訳ありません」と野次馬たちに謝った。

その颯爽とした姿に私はただただ見とれていた。

ボーッとしていると、気がつけば水谷の姿が消えている。
焦った私は急いで彼を探した。

ようやく後ろ姿を発見した時は、既に結構離れてしまっていて。
一瞬迷いもしたが思いきって声をかけた。

「あ、あのっ!すみませんっ!」

そう言いながら走って近づく。

早足に歩いていた水谷は私の声に気づいて立ち止まり、こちらを振り返った。