「…それは…すべて俺のせいです…。俺が自分のエゴであなたを巻き込んでしまった…。あなたの気持ちに気づかず…自分の出世の事だけを考えて生きてきた…俺があなたの人生をめちゃくちゃにしてしまったんです…。
どんなに謝っても…許される事ではありませんが…。本当に申し訳ありませんでした…」

水谷は涙を流しながらそう言った。

「でも、これだけは信じて下さい…。女性としてのあなたを愛する事はできなかったけど…母親としてのあなたは、尊敬していました…」

「尊敬…?」

私は水谷のその言葉にとても驚いてしまった。

水谷が私を尊敬してくれていたなんて、夢にも思っていなかったから…。

水谷はうなずいて、そこから再び話を続けた。

「俺の…、父親は…俺が中学生の時に白血病で亡くなりました。
あまりにも急な事で…。父親に頼り切っていた母親は、情緒不安定になり…、俺という子供がいるにもかかわらず、父の後を追って…自殺…しました。
それからは、よくある、親戚の家で居候ってやつです…。
その時の経験から俺は誰かに頼る事をせず、全てを自分の力だけで生きていかなければならないと…決めたんです…」

初めて聞かされる水谷の過去の話に私はまばたきするのも忘れ、聞き入っていた。
水谷の母が自殺したなんて事も、もちろん知らなかった。

その時の水谷の気持ちを思うと、胸が痛む…。