「それであんな不自然なくらい慌ててプロポーズしたんですね」

「申し訳…ありません…」

再び水谷が謝る。

でも私が聞きたいのは、水谷の謝罪の言葉なんかではなかった。

「水谷さん…。謝らないで下さい…。謝るくらいなら、全部話してくれませんか?今まであなたがずっと閉じ込めていた本心を…教えて下さい…」

水谷は私の言葉に大きくうなずいた。

私たちは食事をとりあえず済ませ、場所を変える事にした。

折角の美味しい料理はそこまで堪能する事ができなかったが、私は満足だった。
初めて来た時よりはじっくり味わえたような気がするのだ。

なぜなら今日は、偽りの自分ではなく、本当の自分を水谷に見せているから…。

話をする場所を変えるといってもいい所が思い付かずに迷っていると、水谷が遠慮がちに言った。

「あなたにも…言いたい事を全部言って欲しいので…、車の中で話しませんか…?もちろん…あなたがよければ、ですが…」

確かにその方が、人目を気にせず話せるに違いない。
狭い空間で水谷と二人きりになるのは、久しぶりすぎて緊張はするけど。

でもこれは、過去をすべて洗い流し、新たな人生を歩みだすために私自身が決めた事。
恥ずかしい気持ちや、未練、私が抱いている水谷に対する気持ちの全てをきれいにする…、そのための時間。

自分の気持ちを再確認した私は、水谷に言った。