すごく隙があるように見えるのに攻め込んでいけないのは、実は隙がないからだろうか。

結局オジサンは、「ウォー！！」と声をあげながら、水谷に向かって行った。
まるで気合を入れなければ向かって行けないとでも言わんばかりの、叫び声だった。

しかし、そんな気合の塊のようなオジサンを水谷はまたもや身を翻してかわした。

そして体勢の崩れたオジサンの手首をスッと掴んだかと思うと、その手首を後ろに捻り上げる。

オジサンは、「痛ぃ痛ぃ！」と言いながら仰向けに倒れた。

オジサンが倒れると同時に、水谷は片手をオジサンの首の所へ当てた。
それは風のような素早い動きだった。

オジサンは両の手が自由になっているにも関わらず、水谷を攻撃するどころか降参のポーズをとるように両手を上げた。

その姿を上から見下ろしながら、水谷は言った。

「もう終わりですか？…ふん…、口ほどにもないな…」

オジサンは水谷を見ながらワナワナと唇を震わせていた。
私を含めたまわりの人たちのほとんどが、その光景を呆気にとられて見ていた。