水谷も私と同じものを注文した。

ワインも勧められたが、丁重にお断りした。

車で来ている事もあるけど、それより…
お酒を飲んでするような話じゃないから…。

料理が来るまでにまず話のさわりだけでもと思い、切り出す。

「早速なんですが…、話したい事というのは、私の…私の本当の気持ち…です…」

私は水谷の目をまっすぐに見つめて言った。

今までの私は、水谷の目を見て話す事などほとんどなかった。
最初は恥じらいから、あとは気まずさからだった。

でも今日は、全てにおいて後悔したくなかった。

それから…水谷の顔を
しっかりとこの目に焼き付けておきたかった。

「私と初めて会った日の事…覚えていますか…?」

私の質問に、水谷は思い出そうと視線を外した。

そして私に言った。

「あの…市内のホテルでお見合いをした日の事ですか…?」

予想通りの答えに思わず笑った。

私が笑ったので水谷が驚いて聞いてきた。

「…違うんですか?」

「はい…。あれは二度目です。初めて会ったのは、私の職場のM市立病院の受付…。治療費支払いのカウンターです」