予約を取ったら時間をメールすると言って、通話を終了させた。

携帯を握りしめ空を見上げる。

今日の夕焼けはまた格別だった。
湖の円周に沿って作られた国道から見る夕焼けは本当に美しい。

燃えるようなオレンジ色が湖全体を染め上げ、湖面がキラキラと光っている。

太陽は沈んでもまた朝になれば昇るように、私も今日これからどんなに辛い現実にぶち当たろうとも、明日は新しい私で生きて行きたい…。

その為に、私は今日、過去の苦しみの全てを洗い流すのだ。

無事予約ができた事と時間をメールし、一息つくために缶コーヒーをすする。
確か水谷はコーヒーにすごくこだわっていて、缶コーヒーなんか絶対飲まなかったな…と思い出す。

たくさんの記憶のほとんどは悲しいものばかりだが、それだからこそ、些細な事でも喜べた。

それは不幸な事のように思えて、実は幸せな事だったのではないだろうか…。

私は昔を思い出しながら、初めて二人で行った時の気持ちに戻ってきちんと水谷と向かい合おうと決めた。