私は固唾をのんで見守っていた。
手のひらを組んで、水谷が勝つように祈る…。

すさまじい緊張でピンとはりつめた空気。

その空気を破り、強面のオジサンがすごい勢いで水谷に向かって行く。

一方の水谷は、構える事もせずにただフラリと立っているだけのように見えた。

『あ、危ない…!』

そう思って目を閉じようとした瞬間だった。

水谷はオジサンをスルリとかわした。
かわされたオジサンはグラリと体勢が崩れたが、それでもまた懲りずに向かって行く。

水谷はさらにまたヒラリとよける。

その動きは、まるでダンスを踊っているかのように優雅で。
全く力を入れていなさそうに見える水谷はただ立っているだけなのに。

オジサンは水谷のどこに向かっていけばいいのか迷ってしまって動けないでいた。