だが一方の水谷が、母親の勘…などという曖昧な理由を信じてくれるかわからなかった。

でも水谷は言い返して来ることもなく、ただ一言低い声で言った。

「…今から向かいます…」

彼のその一言にただならぬ決意を感じた私は、自分が戦うわけでもないのに、武者震いがした。
私も…水谷を信じて待つしかない…。
今、自分にできる事…それはただ、無事に三人が戻ってくるのを祈る事くらいだ。

それでもただここでジッと待っているだけなんてできそうにない。
いてもたってもいられなくなった私は小西のマンションへ急いだ。

裏道を使いすぐに小西のマンションに着いた私は、そのまま部屋に進む。
玄関の前に立って、中の様子を伺おうとしたが何も聞こえてこない。

さすがにアパートと違って造りが頑丈なマンションだけに、防音設備も充実しているのだろうか…。

私は一人ドアの前で右往左往する。

大切な我が子の一大事だというのに、私はなんて無力なのだろう…。

足手まといになるかもしれないが、それでも中に入って様子を確かめずにはいられなくなった私は、思いきってドアノブに手をかけた。

と同時に勢いよくドアが開いた。

驚いて後退りすると、中から出てきたのは水谷に支えられた恭平と聡介だった…。

二人とも水谷に支えられて、ふらつきながらもなんとか自分の足で歩いている。
私は涙を溢れさせて二人の名前を呼んだ。

「恭平!聡介!」

叫びながら二人に近づいた。