「子供達には自分の考えで将来を決めてほしいと思ってる。お前を傷つけた俺が言えた義理じゃないのは、重々承知してる…。だけど、恭平と聡介は、別れたって俺の息子であることは一生変わらない。だから今後何があっても、俺はアイツらを助けてやるつもりだ…」

私を傷つけた?
私が傷ついた本当の理由なんてわかってないくせに…

怒りに震える私は思わず言いかけてしまう。

「何をいまさら父親ぶってるのよ…。そう思うんだったらどうして…」

『もっと早く私たちに向き合おうとしてくれなかったの?』と言いたかった…。

でも、今さらそれを言ってなんになるというのだろう…。

しかも今、本当に恭平と聡介の安否が問われているのだ。
悠長にしてはいられない。

「いまさら言ったって仕方ないわね。とにかく今は…あの子たちの居場所を探すのが先決だわ…」

私がそう言うと、水谷は急に丁寧なしゃべり方になった。

「智子…いや、松島さん。実は恭平の友達から聞いたんだが、もしかしたら市内のU町に、ご主人のマンションがありませんか?」

いきなり口調が変わった水谷の真意がわからず、尋ねようかとも思ったが今はそれどころではない。

水谷の言うU町のマンション…。
確かにその辺りに小西のマンションもある。
しかし、それが何か関係があるのだろうか。

「そう…です。あります…。でもそれが今回の事と何か関係があるとは…あっ…まさか…?」

言いながら私はハッと気づく。
もしや小西が子供達に何か?

私は頭の中がどうにかなりそうだった。

小西が…
もし小西が恭平と聡介に何かしていたなら…

私は、水谷に合わせる顔などないではないか…。