私は母親よりも女になってしまっている自分を棚にあげ、まるで被害者にでもなったかのような錯覚に陥っていた。

子供たちに、そして水谷に対しても怒りを覚える。
母である私になんの断りもなく子供たちを連れて行くなんて。
バカにするにもほどがある。
水谷との結婚生活は破たんしていても、恭平と聡介は私の大切な子供。
私がどれだけあの子たちに愛情を注ぎ、慈しんで育ててきたか。
その私の大事な宝物を奪う事だけは誰であろうと許す事はできない。

たとえ、私が初めて愛した…
たった一人の男性であっても…。

私は意地でも自分から水谷に連絡を入れないと決めた。
母が心配して騒ぎ始めたが、知り合いの所にいるから大丈夫と適当な事を言ってなんとか納得させた。

そろそろ我慢も限界になった時だった。

待ち焦がれた水谷から連絡があったのは。

私はすぐに電話に出て、水谷を怒鳴りつけた。

「ちょっと!いい加減にしてよ!あの子たちをどこへやったの!?」

言い返される事を覚悟して言ったのだが、意外にも水谷は冷静だった。