翌日夜遅く帰宅した私を出迎えた母は、ひどく慌てていた。

「どうしたの、お母さん、そんなに慌てて?」

「どうしたもこうしたもないよ!アンタ、何回も携帯鳴らしたのに、なんで出なかったの?恭平と、聡介がまだ帰ってこないんだよ!携帯もつながらない…!」

私は母の言葉に愕然とした…。

「どういう事?」

必死に気持ちを落ち着けようとするが、心臓のドキドキがおさまらない。

「夜の七時頃、聡介の学校に電話してみたんだけど、学校には普通に行ってるみたいなんだよ…。大騒ぎになっちゃいけないから、とりあえず、ちょっと遅いだけだと思うって、先生には言っといたけどね…。でも、もう十二時過ぎてんだよ?いくらなんでも遅すぎるだろ?聡介だけじゃない、恭平も帰ってこないなんて…」

泣き崩れる母の背中をさすりながら、私自身も気持ちを落ち着けて考えてみる。

学校に行っているなら、拉致や監禁といった事件性はないだろう…。
ただ、まだ初日だからなんともいえない。

頭の中に水谷の顔が浮かぶ。
もしかしたら…という思いが過った。

携帯を取り出し、水谷の番号を電話帳から引き出す。
発信しかけた所で、携帯を閉じた…。

水谷に電話して何を言おうというのか…。
自分の再婚に浮かれて、子供達をほったらかしにしていたとバラすようなものだ。

もう少し様子を見よう、私はそう決心し、母に言った。

「お母さん、明日まで様子を見よう。ちょっと心当たりがなくもないから。
今日はもう遅いから、明日調べてみる」

母は仕方ないと言ってうなだれた。

私は明日、聡介の学校へ連絡してみようと考えていた…。