「入籍は今すぐにでもして…。いつなら引っ越せそう?」

「…………」

「おい、智子…。聞いてる?」

「え?あ、ごめん!なんだっけ?」

「全くどうしたんだよ。さっきからボーっとして」

私は自分がいつまでも水谷に捉われている事に気づき、小西に申し訳ない気持ちになる。
もっとちゃんと小西と向き合わなければならない。

そう思った私は、そこからはきちんと今後の事について話し合った。
できる限り早く小西のマンションへ引っ越す事。
もちろん子供たちも一緒に。

私は決めた事を子供にも話してすぐにでも引っ越すと約束した。

毎日仕事から帰ると、引っ越しの準備に追われていた。
休みの日にまとめてやってもよかったが、やると決めるとやらずにいられない。
後回しにはできない性格なのだ。

そんな忙しい日々を送っていて、私は恭平と聡介の事をほとんど構ってあげられないでいた。
疲れてすぐに寝てしまい、朝も早く仕事に出かけ、週末には小西の所に行き…。
私は母親として、子供の気持ちに気づいてあげられないまま小西との新生活で頭がいっぱいになっていた。

一度恭平が帰宅したての私に話したい事があると言ってきたが、急ぎじゃないなら別の日にしてくれと言い、聞いてやらなかった。

あの時私がちゃんと恭平の話を聞いてやっていれば…

あの子たちがあんな怖い思いをせずに済んだのに…。

やはり私は浮かれていたのだ。

女である前に、まず母でなければならなかったのに…。

その事に気づいた時は既に手遅れだった。