『カラ。』

まだ 外は 明るく 男大浴場の
着がえの部屋は、
ユキノジョウと、おじさん
1人しか いなかった。

けれど、
入り口が 開く 音と

「あれぇ。もしかして、白鷺くん
じゃないのん?
さっきはぁ ありがとうねぇ~」

チャラい 声がして、見たら
白のスーツの タレ目 男。

白しけメンの、『ハジメさん』が
ノレンの前に 立ってた。

「おじさん。なんで、
なんで、ついてくんの?」

ユキノジョウは、服を
とっとと、ぬいで タオルを
肩に ひっかけた。

「白鷺くん!おじさんじゃない!
もう~、さっきまでぇ、
ハジメさんって 呼んでくれてた
よねぇ?!わざとだよねぇ?!」

ドカドカと ユキノジョウの前に

「たまたま、だよん~。もう!」
て、
ハジメは やって来て、
うでを 組んで ニラんできた。

けど、
目線を 下にすると、
「白鷺くん、毛 はえてるんだぁ」
とかを、ニヤリとして
言いやがる!!

しかえしかよ!

「『ハジメさん』
そーゆーの、 セクハラだろ!
思春期だし、やめろよな!」

そう 言って、
肩のタオルを ふりまわして
ポフポフ
ハジメの顔を たたいた。

タオルだし、イリョクゼロだ。

「わっ!!ごめん~。ふざけすぎ
たよん。ごめんごめん~。」

ハジメは、
それでも 半分 笑いながら
白のスーツを ぬぎ 始める。

それを、おかまいなしに
ユキノジョウは 風呂の ドアを
開けて 先に入った。

「わ。」

目の前に
天井から 光がそそぐ 大浴場に
ユキノジョウは、声をだす。

コンクリートのまんまの
中に、木のにおいが して、つい
しんこきゅう する。

湯気が 体いっぱいに なった。

「白鷺くん~、待ってぇ。あれん
すごく 明るいって 思ったら~
天井が ガラス張りなんだぁ。
サンルーム みたいだねぇん。」

入り口で、立ちっぱなしだった
ユキノジョウに、追いついて
ハジメも 入って、
中の 明るさに おどろいてる。

「もともと、赤ちゃんの お昼ね
部屋だったって、ここの人が
言ってた。赤ちゃん、育てる
所だったん だって。」

ユキノジョウは、
オケを 手に取って 洗い場に
すわって、聞いた話を する。


ハジメは、

「そうなんだぁ、、、乳児院って
聞いてたけどねぇ。明るい。」

天井のガラスから、おりてくる
光を まぶしそうにして、

ハジメも、ユキノジョウの
となりに すわって、
オケに お湯を 入れた。

洗う 所には、ちゃんと 鏡が
あって、ユキノジョウが
鏡ごしに ハジメを 見て思った。

やっぱ、頭1個よりも ずーっと、
オレの背が ひくいよなあ。
この人も、あんま 高くないのに。

学年変わるまで、
ガンガン 背がのびねーかなー
と、ユキノジョウは
シャンプーのポンプを
おした。

シャワーを 2人が 出して、
ガシガシと 頭を あらう。

「白鷺くん達はぁ、もう ご飯
食べたのん?もしかしてぇ、
ここに今日~泊まるのぉ~。」

ハジメが シャンプーをしてる。

ユキノジョウは、

「そうですよ。ここでとまり。
ご飯も、さっき ここで食べた」

自分も シャンプーを流して、

この人、洗う順番、オレと
おんなじ 人だー。
と、目を細めて、
コンディショナーの、ポンプを
おす。
そこで、思い出して

「あ!ケーキ!あった?」

レモンのホテルで、教えた
教会のカフェを 聞いた。

「あったぁ、あったよん~。
ホント、助かったぁ。先に、
ケーキは、お留守番の子達に、
置いてきてぇ、
お風呂に来たんだよねぇ。」

簡単に
体も、洗いおわった 2人は、
さっそく
木のにおいが する、
湯船に むかう。

さきに、お風呂に 来ていた、
島のおじさん だと思う 人が、
お湯に 気持ちよさそうに、つかる

「これかあ~、いい香り
するのはぁ、入浴木だぁ~。」

ハジメが、お湯に プカプカしてる
輪切りの 木を つまんだ。

『兄さん、この コマイの、
あんたさんの 息子かの?』

ユキノジョウ達が、
お湯に入ると、おじさんが
聞いてきた。

「えぇ~。やだなぁ、僕、子ども
いる年に 見えるんだぁ~。
まだ、結婚もしてないしぃ、
彼女だってぇ、いないのに!」

うあ、この人 彼女もいねーの?
ユリヤを
ナンパ どこじゃなかった。

ハジメの 言葉に、
ユキノジョウは、少しだけ
かわいそうな顔を、向ける。

『すまんの。なんや、似とった
けんね。 従兄弟か?なら、
ここに 泊まるんかの?』

かまわず、しゃべる おじさんに
ユキノジョウは、あきらめて、

「はい。今日は、
ここで とまり なんです。」

と、答えておく。

『おー!なら、ここの 朝メシ、
ご飯を 選びよ。玉子かけが、
旨いんね。
あれや、島に移住
した夫妻がな、洗卵してない
玉子作っとおけ、鮮度が ええ。

冬は室温でな、1ヶ月持つのぉ』

頭に、タオルをのせて、
おじさんが ユキノジョウに
ニコニコと、教えてくれた。

「玉子って、洗わないだけで、
そんな 持つんだ。すげー。」

ユキノジョウの おどろきに、
満足したのか、
おじさんは、きげんよく
お湯から 体を 出して、

『だからの、朝は ご飯な。』

といって 水を かぶって、
浴室から 出てった。

ハジメは、
玉子の話を 聞いていたと、
思うけど、

お湯に、肩まで つかって
浮かぶみたいに 天井を 見ている。

あんまり、見てるから
ユキノジョウが、

「ハジメさん。どーかした?」

聞くと、

「うん。赤ちゃん達ぃ、ここで
お昼寝してたなら~、きっと
気持ち よかっなんだろなぁって
思ってたぁ~。」

て、木の輪切りを クンクンと
ハジメは においを かいでいる。

子どもか!!

絶対、ユキノジョウと 2人に
なったから、と思う。

今度は 平泳ぎのフリをして
お湯の 中を、ハシからハシまで
ハジメは、遊んで 動き 回った。

「も、オレ出ますね。」

ユキノジョウが、
お湯から 上がると、

「待ってよん、息子くん~。」

ユキノジョウを おいかける
ハジメが さっきの おじさんに、
乗っかって フザケてきた。

白しけメンめ。って、
ちょっと イラってしたけど、
まてよ?

ユキノジョウは、体を タオルで
ふきながら ハジメに

「じゃあ、お父さん、、ちょっと
聞いて 、、 いい?」

言ってみたら、

「ええ?!お父さんって!
年になるのぉ~。僕って~」

の 返事をされて、この大人は!
って顔に でたんだろーな、

「うそ うそぉ~。」

って、ニコニコ ごまかされて
すぐ、
「香箱ちゃんとぉ ケンカした事」

当てられた。
レモンの ホテルん 時から、
ハジメには、バレているだろうと
ユキノジョウは、予想していた
とおりで、
カッコわるくなる。

「どぉしたら、仲直できるかぁ?
なんて相談ならぁ、何が あった
のか~ 聞いちゃうよん~。」

ハジメは、

タオルを まいて、
扇風機の 真ん前で、風に 声を
ふるわせて ユキノジョウに
目線を 合わせる。

うーーーーーん。
いえない。

「じゃあ。今日とまる 間、
気まずいのって、どーやって
いてたら いっかなーとか、、」

ユキノジョウの ことばが、
だんだん 小さくなったのを、
最後まで、ハジメは
聞かないで、

「よぉし!白鷺くんはぁ、今日
僕と 一緒の部屋に
泊まりたまえ~。
うん! そう~。僕も 今日は
ここにぃ、泊まるよぉ。空いて
るか、聞いてからになるけど
決まりだぁ!!」

そう言って、悪そうな顔を
ユキノジョウにして、

洗面台に やってきた ハジメは
ドライヤーで 頭を 急いで
かわかし はじめた。

そして、

「今日だけ、白鷺くんの ファミリ
ーに、なった気分で、相談に
のるよん。まかせて~!!」

へんにウレシそうな
笑顔になって
ユキノジョウの 頭に ドライヤーの
風を 当てて 遊ぶ。

しまったかもって 思って、
ユキノジョウは、

「あの、大丈夫です。いいです」

まさか、この大人と
とまるのも、やっかいだと
やめるって、
言おうと したのに、

ハジメは、
ユキノジョウに 早く服を
着ろと せかす。

「ほらぁ、 僕のパジャマ 取りに
白鷺くんもぉ、一緒に いく ~」

ハジメの 言葉に、「?」って
なる ユキノジョウ。

それでも、
2人で、
ノレンを くぐって、
ゲストハウスの スタッフを
探す、ハジメが

ユキノジョウの 手を 引いた。

だれかと、手をつなぐのは
お昼ぶりだったし、
なんだか、
まあ いっかって ユキノジョウは
思った。

「林間学校って 思っとくか。」