「そうかぁ。グリーンチャペル
では わからないはずたよねぇ。
もっと~、本質のところで
聞けば 良かったんだぁ~。」

ハジメは、
オープンカーを 走らせながら
1人ごちる。

キャンプに、
最近なら、グランピング。
ボーイスカウトなんかの
野外活動。

その概念は、開国後に
キリスト教によって
もたらされた文化。
英会話学校の 走りも
キリスト教による所が 発祥だ。

そして、 グリーンチャペル。
野外礼拝場。

そうかぁ。そうだったの~。
失念していたよん~。

真っ白い オープンカーの
ハンドルを握り、
ハジメは 思わず 苦笑する。

まだ 国内の移動が 緩和な時、
本土から 島に
ある 宗教者のもとへと
ミサに 参加していた
話のままなら
グリーンチャペルに参加していた と、 口伝される だろう。

けれど、戦後、その人が
荼毘に伏して
グリーンチャペルが
現行して いなければ、
もっと 別の 記憶文言に
変化している 可能性を、
考慮すべきだった。

記憶になるよう、
苛烈な 名称へと。

「こ~ゆ~のを、焼きが回るって
言うんだろうね~。やだやだ」

今と なれば、
昔の仕事の 癖。
今の仕事の 延長。
そこに 好奇心と
趣味心が 加わっての 偶然だ。

「だからと言ってぇ、見つけて
僕は どうするってわけじゃあ
ないんだよねん~。
埋蔵金でも ないからねぇ。」

ただ。
ただ、決して大きくない島なのに
あまりに、事象が 集まりすぎる。

「事象がぁ ブラックホールに
吸い寄せられ 集まる みたい
だよねぇ。
その先に、何が あるのか~?」

ただ、
ただ、生まれた疑問を 解いて
見たい。

今、
人口も 金融も、経済も
パワーバランスを 日本地図に
落としてみれば、
主要都市に 大きくマーキング
されるだろう。
悲しいかな、
ウイルス拡大地図でもだが。

それを、少し
要項を変えてみると、
その 場所が 変化する。

例えば、時間軸を変える。

とたんに、
地方に マーキングが変わる事が
多々あるのが 面白みとなり、
人は
歴史を 研究するのかもしれない。

金、人、税。
面白い事に 比例していない
矛盾が 地図にすると
明確になる 軸がある。
良いも悪いも 人の営みだと
それが ハジメに 警鐘を 鳴らす。

この嗅覚が、
前職では、大いに役立ち
今職では、
アイデアや 扉を開く鍵になる。

ある 要項に当てる。

とたんに、離島や島に移る
パワーバランス。

分かりやすいのは、人口密度。
今の東京なんて 及ばない
密度を叩き出す 島がある。

真っ白い オープンカーは、
港の 集落を ぬけて、
少し 山に 向かう。

「始めはぁ、研修レポートから
かなぁ。まだまだ駆け出しの
頃なら~、何年前かな~?」

この島には 昔から
島の 年予算を越える
石の産業があった。
それほど
資質の良い石材だったのだろう。
石職人の優秀さは、
城はもちろん、
国会議事堂をも 作った事から
理解できる。

「ほらぁ~、この時点で
国レベルで 渡りあう軸がある
んだよねぇ。 あれ、確か1回
首都が 広島に移った時も、
議事堂も 広島に移ってるかぁ。

きっと『議院石』の石工でも
仕事してるよねん。明治天皇も
広島に 移ってるから~。」

ああ、本当にねぇ。
土木事業っていうのはぁ、利権も
いいところだよ~。

それが 面白そうで、
着眼したわけ だけどねぇん。
あの頃は 若かったなあ~。
今もだけどぉ。


ハジメは、ちらりと
ハンドフリーに セットした
電話の案内書を 確認する。

「迷いそうにない~ 1本道だよ」

そんな島に 戦時中1人の思想犯
として、宗教家が 閉込められた。

「不思議だよね、巣鴨プリズンが
あった場所と同じ漢字なのはぁ」

本土決戦の際に、
世界に 名の通った その人。
交渉戦略に
差し出す計画さえも あった人物。

大正の時代を代表する
ベストセラー本を 出し、
ノーベル文学賞候補や
ノーベル平和賞候補に なった

人物でも ある。

伝説や 批判も多く 真の姿は
今となれば 計る事は、
ハジメにも できない。

それでも、
時代の渦を 造るような モノを
この島は 引き寄せるのは
結果に 明らか。

かつて、思想犯と呼ばれた
『世界の三賢人』を 引き寄せ、

『未曾有の産廃』を
呼び込んだ 宿命の島。

「さらに 呼び寄せるは、
『不死身の長官』と『平成の鬼平
弁護士』 なんだよねん」


世界的にも 罪悪となった
産廃事件の訴訟は、
1人の産廃業者のみならず、
認可した 県をも相手となり
泥試合になる。

それを 他県である
兵庫県警本部が 詐欺まがい
産廃の不法投棄容疑で 業者を
摘発したのだ。

青天の霹靂だった。

そこから、事態は
大きく 動いた。
担当官は、
後に 警察庁長官に まで なり、
カルト教団に 狙撃される人物だ。

「地方警察に いても~敏腕は、
敏腕 だったんだよねん。
でもぉ、
当たらないで有名なパイソンで
3発当てるスナイパーも すごいけ
どぉ、3発受けて 生きてるとか
不死身さ すごいんだけどぉ。」

あわせて、
『平成の鬼平弁護士』と呼ばれた
人物が弁護をすることになり

『豊島事件』は
ようやく 潮目が変わった。

取り調べで、
産廃者は、服役 経験があり、
刑務所の 囚人に、
産廃のカラクリを 教えられたと
供述している。
産廃犯罪の メソッドだ。

若き日のハジメの
好奇心は、闇と背中合わせの
スラムだった地域に
無邪気な 足を 運ばせた。

「そこで 耳にしたのがぁ、
スラムで無縁仏の火葬をする~
賢人の話だったんだよねん。」

ゴミを 焼いて
黒煙を あげる島には、

慈悲の 火葬をする
『切り札』という名の贄 がいた。

これを
神は 何と 見ていたのだろうか?


かくして、
ハジメは 世の陰と光を 1つに
集めた 島に興味を持つように
なった。

白いオープンカーは、
街では 想像がつかない
小さく 黒い家の 前に着く。

そこには、
夕方のミサと、
カフェを していると 書いた
手書きの 黒板が ポツリとある。

「さてぇ、何の お土産を持って
帰ることが~出来るかなん~」

ハジメは、
開けられた、建物の入り口を
くぐる。