銀河を走る
電車みたいに、
日が暮れた 棚の田んぼを
島のバスが 上がってきて、

ユキノジョウ達は
バスに 乗っている。

『来年も こいよ。虫おくり
とか、今度は やろうぜ!』

カイトは
ユキノジョウに、中山の行事を
いくつか 教えてくれた。

例えば、
秋の歌舞伎の 後には、
今日の 昼みたいに 芝生の階段に
キモノを干すみたいだ。

『「どぅやぶつ」って
言うんだぞ。キレイな衣装が
いろいろあったろ?』

そうカイトは言ってた。

神様の場所で ある行事 なら、
絶対、カイト達は あそこに
いるから、
また 会えるって 言うんだよ

ユキノジョウは、
暗くなる バスの外を 見つめる。

ふと、ガラスに 隣のユリヤの
顔が 映ってるのに
気がついた。

「なあ、ユリは また、
ここに来たい?」

1日、男子と女子に 別れて
ボランティアを していたから、
本当に、ユリヤと いるのが
久しぶりに 思えるし、

バスが 大きく動くと、
自分の腕に、ユリヤの腕が
あたるのも、うれしい。

オレも ユリヤも、
腕が 焼けて ほてってる。

「うん、来たい。
教えてくれた。虫おくりの日とか、秋の舞台とか、屋台がでるって。」

なんだ、女子も おんなじ事
言ってたのかよ。

少し。日焼けした顔を、
ユキノジョウに向ける、ユリヤに

「そっか。ユリが 、、来たいなら、
オレが また 連れていくな。」

ちょこっと、ドヤ顔をして
また、窓の外を見て おいた。
映ってる ユリヤがうなずいてる。

そっか。そっか。
窓の自分がの口が
上がってた。



ユキノジョウの住む街は、
どっちかといえば、都会よりだ。

港も山も あるけど、
夜も明るいし、コンビニばっか
あるから、遅くまで 子どもは
歩いてる。

『ユキノジョウ達は、
いいよなあ。遊ぶとこ いっぱい
あるだろ?ここだとさ、
芸術祭ないと、見に行くとこ
ねーし、デートもできねー。』

カイトは、そんなこと言ってた。
ユリヤの向こうに、寝てる
アコを、ちらっとユキノジョウは
見てみる。

アコ、同い年の男子と、
帰ってくるのん、遅かったよな。

『ユキノジョウ見たか?
坂手港んとこの ミラーボール?
あとさ、井戸の神社とか。

他の港にもアートってやつ
あるだろ? あーゆのんさ、
芸術祭なると、
だんだんふえたり、
その時だけ 店ができるだろ?
それを 見たりする
ぐらいしか、ないんだよなー。』

なんとなく、
カイトが 言いたい事は、
ユキノジョウにも わかった。

でも、それは
反対に、ユキノジョウ達に ない
モノ だとも、今日は 思った。


オレ達んとこは、
毎日が、おんなじで、
そのまま 何年しても、
周りに見える世界は かわらない。

ある日、あんな ヘンテコが
現れたりしない。



「ねぇー、副女さん。
今日って、泊まるとことか、
ご飯どーするの?」

前の 2人席にいる、
ユキノジョウの母親が、隣の
副女さんに、予定を聞いている。

日焼け止めしてても、
さすがに、母親達も 焼けたな。

「会計女さんっ、今頃聞く?
行き当たりばったりだなあ、本当。
明日早くに、次の島に行くから、
今日は 船が出る、土庄港の近くで、泊まるよ。
ご飯も、宿の近くに、
スペイン料理を 予約したから。」

「スペイン料理ってなに?」
「知らない」

2人席で話すのが、聞こえる。

始めは、暗くなった 山の中を
走っていたバスが 、
少し町っぽい道を走りだしてた。

気がつくと、たまに、
夜の海沿いの道を 通ったりする。

「?!」

ユキノジョウの肩に、
やわらかいけど、汗もかいた
髪が、のっかった。

「ユリ?!」

肩の頭に、声をかけたけど、
返事がない。

あたまり、肩を動かせないから、
隣をのぞけないけど、
ななめ下にある、ユリヤのヒザに
アコの頭が のっかってるのが
見えた。

ヤミに、重い、、。
2人分の重みが
ユキノジョウの肩に かかるけど。

「まあ、いっか。」

とりあえず、
肩にのっかるユリヤの髪に、
スリスリと 何回も ほおずり
しておいた。

たまに、
夜の道のカンバンに、
『ようかい美術館』とか、
『迷路のまち』とか
なんか へんな文字が 見えて
気になったけど、

肩にのっかる髪ん においを
かいでると、
どうでも よくなった。

あれ? そういや、
島のバス、ディスタンスって
どーなってんだ?