ある日、林さんが良い事を思いついたと意気揚々でやって来た。私は何だろうと不思議に思ってワードで文章を打った

『林さん、どうしました?良い事って何ですか?』
「あのね、驚かないで聞いてね。今、今野さんがパソコン打っているみたいにキーボードで文章を入力したら声が出るようにパソコンを改造して貰おうと思って」

『声が出るパソコン?』
「そう、ローマ字入力した文字がスピーカーから流れるように改造するの。今野さんのスピードだったら普通に喋っているように聞こえるわ」

『そんな事出来るのですか?』
「私の主人はパソコンの会社で働いているのよ。そこで新商品の開発をやっているの。お願いすれば大丈夫よ」

『でも、お金がかかるんじゃないですか?』
「商品になって売れれば大丈夫よ。絶対売れると思うわ」

私は林さんのアイデアにびっくりした。それならいちいち紙に書いて伝えなくてもノートパソコンを持っていたら普通に会話が出来る。聞いただけでも何だかワクワクした。

その話をしてから数ヶ月後の事である。林さんが新品のノートパソコンを持って会社に来た。綺麗なシルバーのパソコンだ。
「今野さん、出来たわよ。声が出るパソコン」
林さんが机の上にパソコンを置くと、こちらを向いてニッコリ笑った。