私はそれから、長い間声を失った。途中大学病院の精神科へ何度か行ったが声が出るようにならなかった。
「おかしいですね。ストレスが無くなれば自然と喋れるようになると思うのですが」
『今、アルバイトしている仕事を職場が辞めさせてくれなくて辛いんです』

私はノートに書いて医師に渡す。
「それじゃあ、診断書を書きますから、会社の偉い人に渡してください」
私はその通りにした。工場は案外すんなり辞めさせてくれた。

それでも声が出ない事に変わりがなかった。

もう一生声が出ないのかもしれない

私はそれでも構わないと思った。声を失ったおかげでパソコンは格段に速くなったし、ブラインドタッチも出来るようになったのだ。会社での電話の応対は林さんがしてくれる。
ずっとこの会社で働こうかな。

工場も辞める事が出来たし。

そんな時である。また田舎の母から荷物が届いた。中身は相変わらず野菜とインスタント食品だ。やはり底に手紙が入っている。